新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類引き下げにあたっての要望書

2023年2月8日

内閣総理大臣  岸田 文雄 様
厚生労働大臣  加藤 勝信 様

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 髙橋淳

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類引き下げにあたっての要望書

 政府は新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を、5月8日より「5類」に引き下げることを決定しました。この決定には、停滞した社会経済の活性化に国民の間で期待されているところですが、私たち医療福祉生協はこの3年間地域医療・介護を支えてきた立場から大きな懸念を表明します。
 新型コロナウイルス感染症と対峙してから3年が経ちましたが、医療・介護従事者は片時も休まることなく、国民、地域住民のために昼夜を分かたず奮闘してまいりました。第7波、第8波では、想像を超える感染者数となり、多くの医療機関・介護施設でクラスターが発生し、スタッフの感染および家族感染による濃厚接触者の増加で勤務者が減り医療・介護の継続が困難を極めました。また、受け入れ病床の満床やクラスターによる新規入院中止などにより基礎疾患のある高齢者が入院できない状況が起きました。新型コロナウイルス感染患者も含め、医療・介護を求める地域の声に「応えたくても応えられない」状況が続きました。
 新型コロナウイルス感染症は5類となっても感染リスクは変わりません。5類への引き下げおよび感染対策の見直し(マスク着用など)により、国民に「感染対策は不要」といった誤解を招くことが考えられます。また、医療費の公費負担の削減により、新型コロナウイルス感染疑いの受診控えやワクチン接種率の低下が懸念されます。さらに、「新型コロナウイルス感染患者に対応する医療機関を拡大する」としていますが、現在でも「患者動線区分の難しさ」や「高齢者や重症化リスクの高い患者が多いこと」などにより、発熱外来に対応できない医療機関も少なくありません。
 こうした状況をふまえて地域の医療・介護の崩壊、救急現場のひっ迫を起こさないために、以下の対応を求めます。

一.重症化リスクの高い高齢者が感染した際、速やかに入院加療ができるように重症者対応の体制整備をおこなうこと。
一.医療機関の患者受け入れや相互連携が円滑に行われるように、自治体による入院調整機能、救急搬送調整などのサポ
  ートを継続すること。
一.多くの医療機関で発熱外来に対応できるように感染対策等の指導援助、およびゾーニングなどにかかわる財政支援を
  行うこと。
一.病床確保補助金は地域の感染者の増減により柔軟に継続すること。また、新型コロナウイルス感染患者の診療(発熱
  外来含む)は、特段の感染対策を講じて診療を行うため材料費補填も含めた診療報酬上の加算を付けること。
一.介護事業所におけるクラスター発生時のサービス休止等に伴う減収補填、新型コロナウイルス感染者発生時に医療機
  関への入院ができないことによる施設療養時の加算などの財政支援を行うこと。
一.クラスター防止のため、医療機関や介護事業所等のスタッフが行うPCR検査への公費負担実施および抗原検査キット
  の確保に努めること。
一.新型コロナウイルス感染症に関わる医療費およびワクチン接種の公費負担を当面継続すること。
一.公衆衛生の要である保健所の業務がコロナ禍で激増したことをふまえ、今後の新型コロナウイルス感染症の再拡大お
  よび新興感染症に備えるためにも保健所の強化を含めた公衆衛生分野の体制整備を行うこと。
一.広く国民に対し「感染対策不要」との誤解を与えないよう、適切な周知を行うこと。また、適切なマスク着用の場面
  ・方法について周知すること。

以上