医療福祉生協連創立10周年を迎えて

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 髙橋 淳

 

日本医療福祉生活協同組合連合会(以下、医療福祉生協連)の前身である日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)医療部会は、1957年6月、日本生協連の特別部会として結成され、医療福祉サービスの提供と健康知識の普及や生活習慣の改善援助を通して、組合員のいのちを守り、健康づくりに貢献してきました。また、社会保障の仕組みや医療保障の制度が相次いで後退させられ、社会的セーフティネットが十分機能しないなかで、組合員の助け合い・まちづくりの活動を通して、主体的に地域の暮らしをよりよくし、また、社会の様々な矛盾を多様な協同の力によって解決する力を育んできました。
2010年7月6日、115会員生協の総意として日本医療福祉生活協同組合連合会の創立総会を開催し、9月9日に創立、10月1日に事業を開始しました。そして今年2020年、10周年の節目を迎えることができました。
私たちは、2013年6月、医療福祉生協の理念「健康をつくる。平和をつくる。いのち輝く社会をつくる。」を定め、同時に「医療福祉生協のいのちの章典」を採択して、医療福祉生協が大切にする価値と健康観にふれ、憲法をもとに人権が尊重される社会と社会保障の充実をめざす、権利と責任を明らかにしました。翌2014年6月、理念と「いのちの章典」を実践するみちすじとして2020年ビジョンを発表しました。
この間、急激な高齢化と少子化がすすみ、格差と貧困のひろがりとその連鎖が大きな社会問題となっています。気候変動や災害、そして新型コロナウイルス感染症の蔓延は社会的弱者を直撃しています。様々な背景をもつ多様な人びとが互いに尊重しあい、平和で公正な社会の実現を求める声が高まっています。国連が提唱した「持続可能な開発目標(SDGs)」の「誰一人取り残さない」というスローガンが大きな共感をもって受け止められるのもこうした流れがあるからではないでしょうか。
本年6月総会の場において「医療福祉生協の2030年ビジョン」が採択されました。2030年ビジョンは2020年ビジョンの到達をさらに発展させたもので、メインテーマを「誰もが健康で居心地よくくらせるまちづくりへの挑戦」とし、キーワードは「居心地のよい」「ゆるやかなつながり」「協同の力」「多様性」「平和で公正な社会」などです。
医療福祉生協連は発足して10年の若い組織ですが、その精神は、1948年に消費生活協同組合法が成立して医療生協が生まれ、先駆者たちが運動をスタートさせてから脈々と受け継がれてきました。今まで支えていただいた方々に対して感謝の意を表するとともに、コロナ禍の厳しい状況の中ですが、輝かしい歴史に確信をもちつつ、2030年ビジョンを生かして、新しい時代にふさわしい健康づくり、まちづくりを全国の組合員のみな様とともに創っていきたいと考えております。

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