医療福祉生協は、安心してくらせるまちづくりをめざして、地域の「つながりマップ」づくりにとりくんでいます。地域にどんな資源があり、何が足りないかを見える化し、医療福祉生協でできること、自治体や他の組織と協力してできることなどを考え、具体化をめざしています。
つながりマップは2015年度からの2年間で83生協(791支部・58事業所)で作成されています。
(2017年3月末時点)
私の困ったは、みんなの困った。認知症になっても安心してくらせるマップのとりくみ
多彩なつながりがひろがったとりくみ
【神戸医療生活協同組合 北区支部】
●つながりマップのテーマ・目的
北区支部の班で何に困っているか考えたところ、自分たちの家族が認知症になっていること、そして自分たちの周りにも認知症の組合員が多いことに気づきました。そこで自分たちが困っていることを解決すれば、地域に住む認知症の組合員やその家族が困ったときの支えになるのではないかと思い、「困った解決マップ」にとりくみました。
●作成したマップから見えてきたこと
マップには神戸医療生協の事業所はもちろん、心臓疾患や脳外科など緊急を要する場合に利用できる地域の医療機関を載せました。またケアマネージャーと連携を取りながら利用者の日常に合わせたメニューを組むデイサービスやショートステイ事業所を中心に選別しました。
そこで認知症を診てくれる病院を知らないことに気づき、認知症の診断と治療をおこなっている医者を見つけつながりを作る必要があると感じました。
●つながりマップをこうやって使いました
「まずは神戸医療生協を知ってもらいたい!」と、住んでいる地域にあるつながりたい介護施設や病院に支部・班ニュースを届け続け、つながりをつくりました。また、地域の街おこし連絡会のとりくみに参加して健康チェックや医療・介護相談に来た相談者に神戸医療生協の事業所を紹介しました。
●つながりマップを使ったらこんな成果が生まれました
神戸医療生協の事業所利用者を増やすことにつながりました。またマップを紹介した組合員さんからは「このマップがあれば安心」「縮小して組合員に配ってほしい」「冷蔵庫に貼っておいたら、いざ!の時に使える」との声をいただいています。
多団体(みんな)とつくるマップで地域を見せる化!
多彩なつながりがひろがったとりくみ
【高知医療生活協同組合 旭西支部・旭南支部】
●つながりマップのテーマ・目的
旭西支部・旭南支部は古い住宅密集地が多く、高齢者率の高い地区です。およそ3年ほど前にこの地区で高齢者の孤独死があったため、「高齢者にやさしい旭街をつくるために」をテーマにつながりマップを作成しました。
●作成したマップから見えてきたこと
高知市社会福祉協議会や高齢者支援センターなど行政や他団体と何回も集まりながら、意見やアイデアを出し合い一緒にマップを作成しました。高齢者の居場所が少ない、生活支援の要望が多い、サロンはあるがつながりが薄いなどが見えてきました。地域の状況が見えるようになって、医療福祉生協の役割や期待も見えるようになりました。
●つながりマップをこうやって使いました
高知市の協議体や高知市の学習会で紹介しました。他団体からもマップを地域に紹介したいと相談されています。
●つながりマップを使ったらこんな成果が生まれました
高知市協議体での報告を通じ、高齢者が日常生活で困っていることは「掃除」ということが分かり、支部で話し合い、先ずは困りごとなどの「ききとりアンケート」を行いました。アンケートの結果をふまえ、「たすけあいの会」(有償ボランティア)準備会を立ち上げ、2017年10月1日より「くらし応援団あさひ」の名称で支部のたすけあい活動がスタートする予定です。また、行政や他団体が医療福祉生協と支部の活動を認知し、班会・サロン活動、健康づくり活動への協力が増えました。
いきいき高齢者のまちづくりで多世代交流がひろがったとりくみ
【鹿児島医療生活協同組合 星ケ峯支部】
●つながりマップのテーマ・目的
高齢者がいきいきと住み続けられるまちづくりをテーマに、困りごとを抱えた人や地域で協力しあえる団体等を把握するために、つながりマップをつくりました。
●作成したマップから見えてきたこと
会場やアクセスの問題で組合員の活動する地域が限定されていることが分かりました。
また若い世代が多く住んでいる地域であるにもかかわらず高齢者を対象とした企画に偏り、多世代での交流ができていないことも見えてきました。
●つながりマップをこうやって使いました
鹿児島市から委託を受けている「愛のふれあい会食事業」や町内会・老人会などの地域に関する情報をマップに記すことで居場所づくりのイメージができ、地域の人々が気軽に集える「たまり場」をスタートするきっかけになりました。
●つながりマップを使ったらこんな成果が生まれました
夏休みに子ども向けのたまり場(全5回)を開催し、平和やからだの仕組みをテーマに学習しました。これらの学習を通じて子どもだけでなく子育て世代も高齢者と昔の遊びをして交流し、多世代交流を実現できました。また民生委員や町内会、商店街とつながり「子ども食堂」をオープンする一助となりました。今後はこのようなつながりを継続しながら高齢者も含めて「私の困った」を気軽に話せる、そんな場所を地域にたくさん広げていきたいと思います。
「ご縁SAMURAI」の活躍で地域のネットワークが豊かになったとりくみ
【出雲医療生活協同組合 大津支部】
●つながりマップのテーマ・目的
地域包括ケアを見据え、支部で活躍できる人材を見つけ出し地域を支える活動を一緒にとりくみたいと、大津支部の男性組合員「SAMURAI」を中心に、つながりマップづくりにとりくみました。
●作成したマップから見えてきたこと
大津支部の北部では多くの組合員さんに機関紙「すこやか」を郵送していました。その組合員世帯をマップに記していく中で、北部の地区以外にも機関紙を郵送している世帯が多くあることに気づきました。
●つながりマップをこうやって使いました
機関紙が郵送されている世帯は、マップづくりに参加した「SAMURAI」たちの知り合いであることがわかり、配達世話人になってもらう声がけにつながりました。また「SAMURAI」たちの知り合いで組合員でない方も多くいることもわかり、組合員加入の声かけを行うきっかけにもなりました。
●つながりマップを使ったらこんな成果が生まれました
「SAMURAI」の「ご縁」により長年の課題であった北部地区の配達世話人の発掘をすすめ、16名の配達世話人が誕生し、地域のネットワークが豊かになりました。つながりマップは「支部の皆さんが問題を共有し、意識を持ってその問題にとりくむ」という活動づくりにとても役立てることができました。
お店や行政とつながり地域での健康づくりがすすんだとりくみ
【青森保健生活協同組合 小柳支部】
●つながりマップのテーマ・目的
地域住民や地域の団体とつながり、居場所づくりや班※づくりを行うため。
●作成したマップから見えてきたこと
小柳支部のけやき地区には班がなく、組合員の活動が活発でないエリアがあることがわかりました。
●つながりマップをこうやって使いました
けやき地区で「何ができるか」「誰とつながることができるか」マップをもとに支部で検討しました。組合員理事が地元企業の会長さんと知り合いだったことから、地域の居場所づくりに協力が得られないか相談してみることになりました。
●つながりマップを使ったらこんな成果が生まれました
地元企業の会長さんと懇談をおこなったところ、「当社の支店を利用して、地域のみなさんの健康づくりができるような活動にとりくんでほしい」と快く協力に承諾していただくことができました。健康づくりにとりくめる居場所として活用したり、青森市の保健師を講師に学習会をひらくなど、行政との関係も近くなりました。
※班とは、組合員が自主的にグループをつくり、健康づくりの活動などを行う場のこと